
「香はよきもの。心おとりたる客のもてなしも、香をたけば、心やはらぐ」
— 清少納言『枕草子』より
はじまりに
古の日本において、香りは単なる楽しみではありませんでした。
それは、言葉にならない想いを伝える静かな表現であり、心と心をつなぐ橋であり、優雅な所作でもあったのです。
現代においても、お香のかすかな煙は、私たちの内側にある静けさをやさしく呼び覚ましてくれます。
お香とは?
日本の「お香」は、空間を香らせるだけのものではありません。
それは、心をととのえ、静けさを招き、自分自身とつながり直すための行為なのです。
僧侶、歌人、貴族たちは、何世紀にもわたり、瞑想や内省、癒しのためにお香を焚いてきました。
日本のお香の力
香水と違って、日本のお香は主張しません。
それは、気づいてほしいと願うように、そっと寄り添う香りです。
喜怒哀楽を無理に変えようとせず、そよ風のように、心をそっと動かします。
たった一本のお香が、心のざわめきを鎮めたり、迷いを晴らしたり、悲しみに寄り添ってくれることがあります。
私の朝の儀式
私は毎朝、白檀のお香を焚きます。
火を灯すたび、自分の中心に還っていくような感覚になります。
そのやさしい香りは、「ゆっくりしていいよ」「深呼吸してごらん」と私にささやきかけてくれるのです。
今こそお香が必要な理由
現代の暮らしは、騒がしく、慌ただしく、気を散らすものであふれています。
そんな今だからこそ、お香は“静けさへの招待状”となるのです。
お香は、なにも要求しません。
ただ、そこに在ることで、私たちに“今”という瞬間を差し出してくれるのです。
香りの時間をはじめてみませんか?
お香を焚くとき、部屋の香りづけではなく、
あなたの人生に“静けさと美しさ”を添えるつもりで火を灯してみてください。
たった一本のお香が、癒しの儀式となるかもしれません。
その香りが、あなた自身への“帰り道”を教えてくれるはずです。